まだしっとりしている赤い髪に、するりするりとブラシを通す。元気にくるんと跳ね返る毛先は、シャンプーの匂いを湯気に乗せて運んでくる。
「〜♪」
 楽しそうなハミング。いつもは静かな時間に楽しい音が混ざると、なんだか安心する。
「さあ、終わったわよ」
「ありがとうございますっ! 次はあたしの番です!」
 果穂が泊まりに来るときは、お風呂上がりにお互いの髪を梳かすようになった。
「やっぱりさらさらで気持ちいいです」
 少しくすぐったいような、暖かな時間。
「……はい! 終わりました!」
「ふふ、ありがとう。……あら」
 果穂の終わりの合図を聞いてか、カトレアがトテトテと歩いて寄ってくる。
「カトレアもやってほしいの?」
「それじゃあ、たくさん撫でてあげましょう!」
「いくよカトレア! わしゃわしゃ〜っ!」
 お腹を見せてたくさん撫でてもらうカトレア。果穂がいると私もカトレアも、いつもより遊びたがりになるみたい。
「マメ丸もこうするとすーっごくうれしそうにするんです!」
「マメ丸も?」
「はい! すっっごくかわいいんです……!」
「まあ……!」
「こんどビデオで撮って見せますね!」
「嬉しいわ! カトレアもね……」
 かわいい仕草の話となるとつい前のめりになってしまう。
「……ふあ……」
「あら、もうこんな時間だったのね」
 だから時間が経つのも早い。
「寝る準備ですね」
 睡眠前のストレッチや美容ケアも一緒に行う。
「最近ちょっと柔らかくなったんです!」
「ふふ。継続は力なり、ね」
 いつもの習慣を一緒にやる相手がいるのは、嬉しいこと。
「明日の朝はジャスティスファイブですっ! いっしょに観ましょうね!」
「ええ、頑張るわ」
 私の習慣を一緒にやっているんだもの、朝の果穂の習慣も一緒にやらないと。
「それじゃあ、おやすみなさい」
「はいっ、おやすみなさい」