また明日も逢えるのに、どうしていつもさようならがきらいになるんだろう?
ちょこ先輩との別れ道は、だいたいが夕焼け空と一緒にあったような気がする。一番星を指さして、もうすぐ帰る時間だねってちょこ先輩が微笑んで、ひときわ強い力でちょこ先輩の背中に抱きついた。ぴかぴかと輝き始めたお星さまに、もう少しだけちょこ先輩がいてくれるようお願いしながら。
「夕焼けが果穂の色だねえ」
ぽつりとちょこ先輩がつぶやいて、あごの下にある頭がもぞりと動いたのを感じる。
空を眺めているんだろうか。柔らかい声が、よしよしって慰めてくれるみたいで、さびしい気持ちがちょこ先輩にばれてしまっているような気がした。
「あたしの色、ですか?」
「うん。きれいな赤色だね」
抱きついたままだったあたしの腕に、優しい指が乗せられる。このままだと、どんな顔をしているのか見えないのが残念だった。
「ちょこ先輩の、髪の色みたいな空もあったらいいのに」
「それはー……ちょっと、ヘンかもしれないね」
「そうですか? あたしは、あたしがそう思ってもらえたみたいに、空のことを見上げて、ちょこ先輩のことを思い出せたら素敵だなあって思います」
「あはは。果穂が、私のことを思い出してくれるの?」
「はい。どこにいても、絶対」
そんな会話をした。
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ちょこ先輩を駅まで見送って、あたしは名残惜しい気持ちのまま、空を見上げた。
「夕焼けが綺麗だね」
一番星を指さして、ちょこ先輩が言った。
「そうですね。あたしの髪の色に、見えますか?」
「もちろん。果穂の髪はいつもきれいだよ」
ちょこ先輩は笑って、頷いてくれる。ずっと昔から変わらない笑顔と、声色で、あたしに伝えてくれている。
遠くから輝く星の光は、ずっとずっと昔から届いたものだっていつか誰かが言っていた。
そうだとしたら、あたしのこの気持ちはいつ、ちょこ先輩に届くんだろう。
「じゃあ、また明日ね」
「はい。また明日」
駅の前で、笑って手を振る先輩に、ついていけたらいいのに。
空の色がいつまでも変わらないまま、あたしのことを思い出してくれたらいいのに。
そんなことを、思っていた。