ルーインド東京
企画・原作 シュンジュプロジェクト
キャラクター原案・著 SHUNJU
二〇二五年(令和七年)、
東京オリンピックの開催から4年。
日本は新型コロナウイルス流行の完全終息を経て、
今まで通りの日常へと戻っていった。
巣鴨に住むごく一般的な女子中学生、平井 遥は
ゴールデンウィークに
家族みんなで大阪万博へ行く計画を立てていたが、
しかし、その前日に東京でM8.8の
大規模な巨大地震が発生した。
首都機能存亡の危機に、
彼女達は無事に生きられるのか・・・。
東京で大震災が発生し、首都中枢機能が停止したら
どうなってしまうのかを知っていただくための
震災シミュレーション小説。
これを読めば東京がどのように被災して
どのように首都機能が停止していくのかが分かります。
最後までお読みください。
はじめに
本作品は首都圏での巨大地震の発生や
首都機能麻痺を想定し、
膨大なリサーチと検証に基づいて制作されたものです。
尚、この物語はフィクションです。
実在の人物・団体・出来事等とは一切関係ありません。
リアリティーを追求し、十分なシミュレーションを経て
オリジナルストーリーを構築しておりますが、
表現上、実際のものとは異なる場合があります。
序章「本震」
二〇二五年(令和七年)————————
東京オリンピックの開催から4年。
日本は新型コロナウイルス流行の完全終息を経て
今まで通りの日常へと戻っていった。
日本各地では再開発が進み、
この年には大阪万博が開催され日本は万博一色により全盛期を迎えていた。
後に、この東京で大震災が起こるとは
知る由もなかった。
東京・巣鴨
ゴールデンウィーク前日の巣鴨中学校の放課後。
幹
「またね~ハルちゃん!」
遥
「それじゃあ またね!幹!」
私の名前は 平井遥。
東京都の巣鴨に住むごく一般的な中学2年生。
明日からゴールデンウィークか
来週の日曜日から三日間家族みんなで大阪万博に行くの!
遥
「はぁ~楽しみだなぁ~大阪万博♡」
そう呟いていた遥は万博を楽しみにして下校した。
遥
「ただいま~」に帰って旅行の準備でもしようっと!」
そして帰宅後、遥の自宅。
遥
「ただいま~」
芳子
「あらお帰り、遥。」
信介
「父さんも旅行の計画で、仕事から早く帰ったからな。」
父親の信介も旅行の計画で仕事から帰宅していた。
そして、テレビでは大阪万博の中継映像が流れていた。
アナウンサー
「五十五年ぶりに開催されている大阪万博には
五十万人以上が来場しています!」
遥
「うわぁ~やってるやってる!あさってから
万博に行くのとっても楽しみだよ~!」
遥は大阪万博の中継映像を観て嬉しそうだった。
遥
「そうだ!遼真にも見せなくちゃ!
お母さん、遼真は?」
芳子
「遼真なら二階の自分の部屋にいるわよ。」
遥
「うん、ちょっと呼んでくるね!」
それを弟の遼真にも見せようと、私は弟の部屋に入ったが、
遥
「遼真、帰ったよ~」
ピコピコピコ
遼真
「うわっ!お姉ちゃん!」
弟の遼真は小学三年生。大のゲーム好き。
強気な性格で、友達の家によく遊びに行くことがある。
遥
「テレビで大阪万博やってるよ!観ないの?」
遼真
「今ゲームをやってる最中だよ!
もう少しでレベルアップなのに!」
遼真は大阪万博のことどころか、プレステ5でアクションゲームをしていた。
遥
「全くうちの弟はうちほんと無意識なんだから!」
遥は呆れてしまった。
するとゲームオーバーとなってしまい
遼真が腹を立ててしまった。
遼真
「うわー!またやられたー!」
まぁ私の家族はこんなものかな。
しかし、このような私達の日常は
長く続くことはなかった。
その翌日、私は地蔵通り商店街で買い物を済ませて
帰宅するときの事だった。
その時、私はその場でラインでやり取りをしていた。
「今、地蔵通り商店街にいる。」
「明日からの大阪万博楽しんでいってね!」
「おみやげ、よろしくね~!」
遥
「え、何?地震?」よ!行ってくるね!」
だが、ラインで友人と母親とのやり取りを済ませた途端・・・。
東京都内ではハトやカラスなどの大群が飛んで。
更には商店街に揺れを感じ・・・
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
遥
「え、何?地震?」
遥のスマホには緊急地震速報の通知と音が鳴って
ブーッ!ブーッ!
そして遂に・・・
ドーーーーーーーン‼
更に、揺れが強くなり、商店街に物凄く大きな地震が発生した。
通行人達
「わああああああああああああああああああ‼」
その巨大地震は東京都内に広がり
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ‼
年季の入ったビルも倒壊し
通行人
「ワアアアアアアア‼」
ガシャーン!
デパートの窓ガラスも損壊し
パリン!バリバリ!ガシャン!ギャバーン!
新宿の高層ビルや浅草の雷門、渋谷のスクランブル交差点も
揺れがさらに増していた。
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ‼
巣鴨の地蔵通り商店街も電線が折れたり、
品物が吹き飛ばされたり、建物が倒壊するほどの
非常に強い揺れを感じた。
ガシャン!ドシャン!パリン!ガチャーン!
遥は身を守りながら叫んだ
遥
「キャァーーーーー‼」
そして、店の看板も落ちてきた。
ガラガラガッシャーン!
そして、数分後・・・
倒壊した瓦礫の周りに、横向きになって倒れ込んでいる遥
そして、遥は目を覚ますと・・・
遥
「あれ・・・?私、助かったかな?」
その場で立ち上がり、その辺りの様子を見てみると
遥
「あっ⁉」
巣鴨地蔵通り商店街は変わり果てていた。
その地震で吹き飛ばされた品物や倒壊した建物で
すっかりボロボロになった。
中には倒壊した建物や落ちてきた看板の下敷きになり数十人が死傷したり、
その瓦礫や破片に当たり、脳挫傷や骨折、血を流してる人も大勢いた。
更には周囲の人達から避難を呼びかける声も響いていた。
男性
「早く避難した方がいいぞ‼」
大学生
「お前そこで何立っているんだ!
後で余震が来るかもしれないんだぞ!」
遥は間一髪致命傷を逃れたが、
東京で巨大地震が起きたことにざわついていた。
遥
「ウソでしょ・・・これが、私達の街・・・⁉」
第一章「状況」
令和七年(二〇二五年)五月三日(土)
関東地方で最大震度7の巨大地震が発生した。
地震の規模はマグニチュード8.8
震源の深さは十キロ。震源地は飯田橋断層。
鉄道や地下鉄、航空便等の交通機関は全ての運航を停止し、
お台場などの臨海副都心では
液状化や津波などの水害が発生し、
杉並区や世田谷区では大規模な火災旋風が発生していた。
今、東京では更なる大混乱が巻き起こっている。
被災された巣鴨、遥は急いで自宅に戻ろうとすると
倒壊された住宅から男の子の呻き声が聞こえた
男の子
「助けて・・・」
遥はそれを見て気づいた。
その男の子は留守番中に地震で倒壊した建物に潰されて
顔は血だらけだった。
遥
「私、今助けるよ!頑張って!」
遥はその男の子を引きずり出して助けようとしたが
しかし、遥自身の力では引き抜くことは出来なかった。
遥
「ダメだ・・・私の力だけじゃ、男の子を救えないかも
そうだこんな時は・・・」
遥は大声で助けを求めた。
ポイント①
救助するときは助けを求めよう!
遥
「誰かー!男の子の救助を‼」
すると、通りの向こうからものすごい速さで軽トラックが走ってきた。
ブーーーーーーーーーーーーーーーンキィーーーーーッ!
軽トラックは急停止して、その中からは大男が降りてきた。
遥
「うわっ!」
大男
「おう!嬢ちゃん。ガキの救助なら俺も手伝うぞ!」
遥
「はい!お願いします・・・!」
大男は倒壊した住宅の瓦礫をどかして
遥はその男の子を引きずり出して救出し、
涙目で抱き撫でた。
遥
「よく頑張ったね。大丈夫だった?」
そして大男に病院まで搬送するように促した。
遥
「あの、この男の子を病院まで運んでもらえませんか?」
大男
「おう!任しときな!俺の軽トラで病院まで一直線だ!」
大男はその男の子を自分に軽トラックの荷台に積んで
再びトラックに乗って走り去っていった。
ブーーーーーーーーーーーーーーーン
大男
「ありがとよ嬢ちゃーん‼」
遥は一安心したと思ったが、大事な事を思い出した。
遥
「あっ!こんなことしてる場合じゃなかったんだ!」
そして遥は、自宅を求めて全力疾走した。
しかし電線は折れて、建物もほとんど倒壊していた。
そして遥は無事に自宅にたどり着いたが、騒然としていた。
遥
「えっ・・・?」
遥の自宅は巨大地震ですっかり変わり果ててしまった。
遥
「あ・・・そうだ!
もしかしたらまだ家にいるかもしれない‼」
遥は自分の家族を呼び掛けた。
遥
「お父さーん‼お母さーん‼遼真ー‼いる⁉」
遥
「ねぇ返事して‼」
遥
「お父さーん‼お母さーん‼遼真ー‼」
しかし、家族に返事を呼び掛けても誰も返事はせず、
誰もいなかった。
遥
「ウソ・・・でしょ・・・?」
絶望した遥は座り込んで落ち込んでしまった。
すると突然遥の後ろから何者かが声を掛けてきた。
隊員
「おい!そこで何してるんだ!」
遥
「えっ・・・?」
遥に声を掛けていたのは1人のレスキュー隊員だった。
隊員
「ここにいたら危ないぞ!君も早く避難所に行くんだ!」
遥
「いやぁ・・・その・・・。」
レスキュー隊員は避難を促したが遥は困惑していた。
隊員
「東京はとても酷い状況だ!
君も自分の命を守ることが第一だ。」
遥は突然立ち上がり、家族で大阪万博に行くこと決心しようと
隊員に対して、こう伝えた。
遥
「あの、私・・・明日、
家族みんなで大阪万博に行くんです!」
隊員
「えっ⁉」
遥
「数ヶ月前に新幹線の切符や入場予約券も
買っておいたから
ずっとその日を楽しみにしていたので・・・」
隊員
「ダメだ!新幹線は大地震で
当分の間運休していて無理だ!
残念だが、その事は諦めてくれ!」
遥
「そんな・・・⁉」
遥はその言葉に落ちこみ、
大阪万博へ行くのを諦められてしまった。
ポイント②
震災が発生すると旅行に行けなくなる。
遥は壊滅状態の住宅街を歩いていきながら呟いた。
遥
「私の街が、こんなことになるなんて・・・」
遥は近所の公園で友人にラインをしようとするが
地震で電波は届くことなく圏外になっていた。
遥
「そうか、電波も地震で届かなくなっていて
ラインもできなかったんだ。」
遥
「そうだ!友達に電話しなきゃ!」
ツーツー
遥
「ダメだ・・・。」
しかし巨大地震の影響で電話すらも繋がることはなかった。
ポイント③
震災が発生すると携帯電話等の
電波が届かなくなる場合がある。
関東での巨大地震により、多くの人が地震や火災による
人的被害をもたらしてしまった。
更には倒壊した住宅の古い車庫に車が押し潰されたり
大規模な停電や火災が発生したり、
年季の入った建物は倒壊して、
ほとんどのインフラは停止した。
だが、地震による被害はそれだけではなかった。
都内の交差点等では道路に亀裂が入ったり、
車が渋滞したり、バスやトラックなどが横転する
被害に巻き込まれていた。
鉄道はほとんどの車両が脱線してしまい、
多くの死傷者を出し
山手線や京浜東北線に新幹線、
そして東京メトロ等の運行は全て停止。
更には空港に停泊中の旅客機は
横転して破損や火災も発生して
欠航どころか、空港内にも往来困難な客も
外国人を含めて大勢埋め尽くされた。
交通にも多くの被害が出た事で
震災による帰宅困難者も増加した。
そんな中、遥が遼真が通う小学校に向かうと
そこには避難する人の行列ができていた。
遥
「遼真が通ってる小学校だ!
そういえば大地震で避難所になってるんだ!」
そしては遥はその小学校の中へと入った。
第二章「避難生活」
豊島第一小学校
遼真が通う小学校にやってきた遥は
避難所の受付をした。
遥
「あの私、 三年一組の平井 遼真の姉の遥です!
避難できる場所とかありますか?」
受付係
「はい、体育館の方になりますが・・・」
避難所になっている小学校の体育館の中に入った遥だが、
そこには、避難者が大勢おり、満員状態だった。
避難所係
「名簿はこちらになります!」
避難者
「ひろみ‼いますかー⁉」
避難者
「かのんちゃーん‼」
遥
「すごい避難者の数だ・・・。」
そしてあまりの避難者数にぶつかりそうな程だった。
避難者
「おら!さっさと歩け!」
遥
「キャッ!」
避難者
「スマホを充電させろ!」
避難者
「飯をよこせ!」
遼真が通っている小学校は
避難者が多すぎて大混乱だった。
そして遥は、なんとか小学校から無事脱出した。
遥
「何なんだろうこれは・・・?」
そして、遥は校門のそばで俯いていると
その通りから一台のスポーツカーが現れて
そのスポーツカーは遥の手前のそばに停止した。
そこには遥の父親が働いている会社の部下、
中村力彦 が降りてきた。
中村
「君が遥ちゃんだね!
もっと広い場所に避難した方がいいぞ!」
遥
「あっ!あなたはお父さんが勤めてる
会社の部下の中村さん‼」
そして遥は、中村の車に乗り、広い避難場所に案内された。
中村の車の中
東京の街は巨大地震によって荒れ果てていた。
中村
「それにしても酷いなぁ。
まさかあの大地震であんな風になるとはな。」
遥
「はい、私も知りませんでした!」
中村
「くそっ!車が渋滞してやがる!ここで曲がらなきゃ!」
中村の車は渋滞している道を通り抜け、
空いている道を走った。
中村
「そう言えば遥ちゃんは
大阪万博へ行く予定だったよな?」
遥
「はい!明日から行く予定でした!
地蔵通り商店街で買い物から帰る途中に
物凄く大きな地震が発生しました!
それで、チケットの払い戻しとかは?」
中村
「いや、それは後回しだ!
状況が落ち着いたら払い戻しできるみたいだ!
とにかく行き着くところまで行こう!」
その後、遥はあるとこにたどり着くと
中村
「よし、ここだ!」
遥が案内された場所は四年前の
東京オリンピックで使われていた国立競技場だった。
遥
「ここは、国立競技場?」
中村
「ああ、そうだ!四年前に東京オリンピックの
メイン会場として使われていたんだ!
俺の友人がアスリートのマネジメントをしていたんだ!
耐震化工事もしてるから
今は避難所としても使われているんだ!
幸いにも大した被害は出なかったから、
今なら出入りできるみたいだ!」
遥は国立競技場が避難所として
使われていることを知った。
遥
「確かにここなら広くて密になりにくいから大丈夫!」
そして遥は、その競技場の中に入った。
国立競技場内部
競技場のグラウンドの中に入った遥は
偶然友達とゲームをしている遼真を偶然見かけた。
遼真
「あれ?お姉ちゃん?」
そして遥は嬉しそうに
遥
「遼真ー‼」
遼真と再会して嬉し泣きして遼真を抱いた。
遥
「良かった・・・無事だったんだね!」
遼真
「あぁお姉ちゃん。僕、その時広い公園で友達と
ホームサーキットをしてたんだよ。
そして、大きな地震が起きた後に
ゆうとくんのパパに、車でこの競技場に
連れてってもらったんだよ。」
実は遼真は遥よりも先に国立競技場に
友達と一緒に入って避難していたのだった。
ゆうと
「ハルお姉ちゃん、遼真くんの事を探してたんだね!」
まさる
「良かったな!遼真‼」
遼真の友達は遼真の姉の再会に励んだ。
遥は嬉しそうに涙ながらにこう言った。
遥
「あと・・・二人とも無事だったんだね。
お姉ちゃん嬉しくて涙出ちゃったかも・・・。」
遼真
「じゃあ、僕はお姉ちゃんと一緒に
テントに入ってるからね!」
そして遥と遼真は避難所のテントに入っていった。
競技場グラウンドのテントの中
配給でもらったのは
おにぎりとカップ麺とペットボトル緑茶だけだった。
遼真
「お茶とおにぎりとカップ麺だけか・・・
これだけで足りるかな?」
遥
「うーんここに来た時、
それだけしかもらってないし・・・」
そして、食糧の事で困っていた二人の前に
スカジャンとジーンズ姿の女子高生が突然、テントの中に押し掛けてきた。
シャッ!
女子高生
「よっ!こんばんは!」
遥と遼真はそれに驚いて腰を抜かした。
遥・遼真
「うわっ‼」
女子高生
「親がいなくて寂しいだろ?ハハハ!心配いらないよ!
なんならアタシも仲間に入れてやるよ!
じゃ!お邪魔するぞ!」
彼女は鞄を開き、食料を差し出した。
女子高生
「ほ~ら、この食糧、大量に持ってきたんだ!
一緒に食べようぜ!」
彼女の食糧は物凄く大量に備蓄していた。
遥・遼真
「はい、いただきます・・・。」
そして三人は食事をしながら会話を始めた。
未夢
「じゃあ、さっそく自己紹介するぞ。
アタシの名は武沢未夢。
目黒南高校に通う高校二年生だ!
ところであんたらは名前なんて言うんだ?」
遥
「あっ私、巣鴨から来た巣鴨中学校に通う
平井 遥っていいます!中学二年生です!
そっちは弟の遼真です。小学三年生です。」
未夢
「へぇ~、あんたらは巣鴨から来たのか
結構大変だっただろうな。」
遥
「そうだ未夢さん!
ちょっと私から見てもらいたいものがあります!」
遥は持参していた大阪万博のガイドブックを
未夢に見せてもらう。
未夢
「あっ、これって今年やってる大阪万博か?」
遥
「はいそうなんです!明日家族みんなで行く予定でした。
でも今日発生した巨大地震で
行けなくなってしまって・・・」
未夢
「あ~それは残念だったな。
ウチじゃそんな無駄遣いできないからな。」
未夢は大阪万博のガイドブックの表紙の
中央の女の子に指をさした。
未夢
「じゃあこいつは誰だ?」
遥
「あっ、この人は関西府の“縞野雷花さん”と言う
大阪府のおかん娘アイドルです!」
未夢
「なるほど!遥は大阪のアイドルにも詳しいんだな!」
未夢
「あっ、そうだ!アタシ、
ポータブルテレビ持ってきてたんだ!」
未夢はポータブルテレビを鞄から出した。
未夢
「ほら!このポータブルテレビ、
充電したてで長持ちするんだ!」
そしてポータブルテレビの電源を付けると、
巨大地震に関する臨時ニュースが流れていた。
キャスター
「今日午後四時四十六分頃、
関東地方で最大震度7を観測する
非常に強い地震が発生しました。
気象庁によりますと、この地震で
震源の深さは十キロ。震源地は飯田橋断層。
地震の規模を示すマグニチュードは
8.8と推定されています。」
遥
「マグニチュード8.8⁉」
ポイント④
首都直下地震の基本想定はM7クラスであるが、
震源や深さ、震源地、地震の規模、周期によっては
M8クラスを上回る場合もある。
マグニチュードが大きければ、
広域になるケースも出ている。
キャスター
「東京二十三区、東京多摩東部で震度7。
東京多摩西部、千葉県北西部、山梨県全域、
埼玉県南部、埼玉県秩父地方、静岡県北東部、
神奈川県東部、千葉県南西部で震度6強。
埼玉県北部、千葉県南東部、千葉県北東部、
千葉県南部、神奈川県西部、長野県南部、
静岡県南西部、栃木県南部、 茨城県南部、
群馬県東部愛知県東部、岐阜県東部、
伊豆地方、三宅島、
神津島、伊豆大島で震度6弱。
群馬県西部、栃木県北部、茨城県北部、
福島県南部、長野県北部、新潟県西部、
静岡県西部、岐阜県南部、
三重県東部で震度5強。」
遼真
「凄い事になってる・・・。」
未夢
「ああ、それは当たり前だ。
これからはもっと酷くなるかもしれないな。」
遥
「そ、そんな・・・。」
遼真
「こんな事って・・・?」
するとテントの中で揺れを感じた。
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
遥
「えっ?今の地震は?」
未夢
「あれは余震だ。今の地震は小さいけど、
大きいのも来るみたいだな。」
遼真
「えぇ・・・。大阪万博はどうなってるかな?」
未夢「さあな。」
そして三人が話してるうちに、
国立競技場は夜更けを迎える。
第三章「移動」
朝の国立競技場。
早く起きた遥はテントを出ると
一人の係員を偶然見かける。
遥
「おはようございます。係員さん。」
係員
「ああ、おはよ。もうすぐ食料が届くからね。」
そして、グラウンドの様子を確認すると避難者達が
ランニングや筋力トレーニングをして体を動かしていた。
遥
「みんな頑張って運動してるみたい!」
それに感激した遥は気になることを思い出した。
遥
「あっ、そうだ!遼真と未夢さんを起こさないと!」
そして遥は先程の自分達のテントに戻り、
遼真と未夢を起こした。
遥
「未夢さん、起きてください‼ほら遼真も‼」
遼真と未夢は遥に起こされて、目が覚めた。
遼真
「おはよう・・・お姉ちゃん。」
未夢
「もうなんなんだよ朝っぱから・・・。」
遥は二人に運動するように促した。
遥
「朝からみんなグラウンドで運動してるよ!
ねぇランニングとか筋トレとか体操とかしないの?」
未夢
「は・・・運動?こんな時に
ランニングとかふざけんなよ・・・!
アタシらはまだ眠ぃしよ・・・!
こんな大変な時によ・・・!」
遼真
「僕達は避難生活してるんだからゆっくり寝てたいよぉ。
ここへ来たのに何考えてるの・・・?」
眠そうで運動する気にはなれなかった二人に
遥は呆れてしまった。
遥
「全く二人とも本当にだらしないんだから~‼」
すると、配給から争う声が聞こえた。
避難者
「コラ!勝手に列を割り込むな!」
その声を聞いた遥は・・・
遥
「配給の方から何かあるみたい!私、
ちょっと様子を見てくるね!」
配給の様子を見に、遥はテントから出て行った。
配給の方では避難者が食料の事で言い争っていた。
不良若者
「オレは昨日晩飯すら食ってなかったんだぞ!
オレに食わせろや!」
避難者「
なんで早くここに来なかったんだ!
もっと早く避難しないお前が悪いんだ!」
不良若者
「オレァもう腹ペコなんだオンドリャー!」
避難者
「いや、お前の分のちゃんとあるんだから!」
遥はその喧嘩を止めにやってきた。
遥
「二人ともやめてください‼」
遥は避難者を説得した。
遥
「皆の物は皆で食べる物!
独り占めなんかしたら皆が悲しむだけだよ!」
そして未夢も説得に加わり
未夢
「遥の言う通り!食料の独り占めは窃盗と同じさ!
まだ警察も到着してないから
その言い争いはやめろよ!」
説得中に突然、雨が降り始めた。
ザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
未夢
「ん?」
遥
「雨?」
雨はいつにも増して強くなり、消防士が現れた。
消防士
「危険です!皆さんここから出てってください!」
避難者は消防士の話を聞いた。
消防士
「この雨は酸性雨と言って、昨日の地震で倒壊した
建物や火災旋風の煤によってできた雨で
最悪の場合、健康被害を受ける場合があります!
速やかに行動をお願いします!」
国立競技場の入り口手前には
複数の車が駐車していた。
避難を促された人々は次々車に乗り込み分散移動し、
遥達も、国立競技場を後にし、
駐車しているオフロード車に乗り込んだ。
未夢
「私と平井姉弟の三人です!」
男性
「分かった!」
その雨は更に強くなる中、遥達は
オフロード車で行き着く場所まで向かった。
車の中
未夢
「あの、私達をどこへ連れて行けばいいですか?」
男性
「日本武道館だ!ここなら頑丈で安全だから。」
東京の街はどこもかしこも荒れ果てていた。
遼真
「どの場所も酷いことになってる・・・。」
遥
「今までと全然違う・・・。」
男性
「たしかにそうだな。
東京は巨大地震で壊滅的な被害を受けてるからな。」
そう話してるうちに、日本武道館に到着した。
日本武道館
遥
「ありがとうございました。」
三人は車を降りて、日本武道館に入った。
未夢
「この避難所に入所する武沢未夢と平井姉弟です!」
名簿係
「はい、こちらに名簿を記入してください。」
未夢は武道館の中へ誘導した
未夢
「よし、こっちだ!」
遥達は武道館内部に入った。
遥
「え、ここって、武道館内部⁉」
未夢
「ああそうだ。本来ならプロレスや
ライブ会場等に使われているけど、
今は避難所として使われているからな。」
しかし、遼真は感激していた。
遼真
「僕、武道館に一度泊まってみたかったんだ!」
遥・未夢
「りょ・・・遼真・・・?」
未夢は係員に空きのスペースを尋ねた。
未夢
「あの、空きスペースありますか?」
係員
「ああ、空きスペースならたくさんあるよ。」
未夢
「ありがとうございます!」
遥達が空きスペースを探していると
未夢の後輩を偶然見かけた。
未夢
「清子‼ここにいたんだ!」
清子
「あっ!未夢先輩!」
遥
「え?じゃあもしかして、未夢さんの後輩?」
未夢
「ああ、そうだ!私の一つ下の後輩の
南川清子って言ってな。
親友である礼奈がアメリカに旅行に行っていて、
昨日の大地震で日本に帰れなくなったんだ。」
ポイント⑤ 海外旅行中に母国で巨大地震が発生すると
帰国できなくなる場合がある。
未夢
「無事だったか?アタシがいたからにはもう大丈夫だ!
ほら、これでも食え!」
未夢は清子に食料を渡した。
清子
「ありがとうございます!未夢先輩!」
その夜・・・遥と遼真が未夢の
ポータブルテレビを観ていると
東京駅前には帰宅困難者が大勢いた。
キャスター
「東京駅前の様子です。
多くの帰宅困難者に埋め尽くされ、
車が渋滞しているようです。」
遼真
「交差点が帰宅困難者で人の海になってる。」
遥
「これじゃ車も通れないよ!」
未夢
「あんた達、そんなの観て、つまんないだろ?」
遥・遼真
「え?」
未夢はビデオプレーヤーとアニメ映画の
DVDを自分の鞄から取り出した。
未夢「じゃあ、アタシと一緒に映画でも観ながら
ゆっくり楽しもうぜ!」
そして、遥達はアニメ映画のDVDを観ることにした。
DVDの映像
崖を登る花梨だが、滑り落ちるのが怖くて泣きわめている
花梨
「ふぇぇぇぇぇんやっぱり怖いよぉ~!」
すると崖の頂上にいる桃衣が花梨に手を伸ばす
桃衣
「花梨、私の手に捕まれ!」
そのDVDを鑑賞する遥達
遥「未夢さん、この映画は?」
未夢
「“西の飛脚”って言ってな。これの劇場版で、
壮大な冒険をしながら荷物を届けるって言う物語だ。
アタシ、このアニメめっちゃ大好きで、
全シリーズ全話録画してるし
原作単行本も全巻集めてるからな。
ちなみにこの映画のDVD、
この前通販で購入したんだ!」
未夢は遥と遼真にオレンジジュースを差し出した。
未夢
「ほら、二人とも、ジュースだぞ!
一緒に飲んで映画を楽しもうぜ!」
遥・遼真
「ありがとうございます!」
そして遥達は、日本武道館で
楽しい夜を過ごしたのであった。
第四章「倒壊」
あの巨大地震から数日が経過した。
関東地方で発生した令和史上最悪の大震災で、
死者六万四千人、避難者数二千七百万人、
帰宅困難者一千万人を超えてしまい、
経済損失も以前よりも大幅に増していた。
住宅街の火災旋風により、首都圏は日傘効果状態となり、
雨が降れば、酸性雨になることもある。
関東は未だ、復興の見通しは立っていない。
日本武道館
ある日、遥は部活で作った手芸作品を未夢に見せてもらった。
遥
「未夢さん、これ全部私の部活で作ったんです。」
未夢
「うっはー!すげーな!遥ってこんな物も作れるんだ!」
偶然通りかかった女性も感激していた。
女性
「あら、あなたお上手ね。」
遥
「あ、実は私、中学で手芸部をやっているんです!
これらの物は全部、巣鴨のお祭りや即売会で
販売しています!」
女性
「まぁ~あなたって本当に天才よね!」
すると突然、武道館内部で揺れを感じた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
女性
「あら?」
すると、内部で強い余震が発生した。
ゴオオオオオオオオオオオオ
武道館内部では避難者の悲鳴が響いた。
避難者
「ウワアアアアアアアア‼」
避難者
「キャアアアアアアアア‼」
未夢
「皆‼体を伏せろ‼」
すると未夢のポータブルテレビから速報が流れてきた。
キャスター
「今、新しい情報です!
東京タワーが強い揺れによって倒れていきます!」
遼真
「見て!東京タワーが!」
三人が東京タワーの状況を見ると
未夢
「あっ!」
すると東京タワーが崩れ倒れて、その周りにいた人達の悲鳴が響き、
テレビの映像
周囲の人々
「ワアアアアアアア‼」
ガチャーン!
ハトがたくさん飛んでいった。
そして、揺れが収まった後————
その映像観た未夢は騒然した。
未夢
「これは・・・大変な事になってる‼」
そんな未夢は、遥と遼真を連れて東京タワーの様子を見に行くことにした。
未夢
「アンタ達そろそろ行くぞ!
東京タワーがまずいことになってる!」
遥・遼真
「うん!」
三人は日本武道館を飛び出して行ってしまった。
係員
「あっ‼君達!待ちなさい!」
ポイント⑥ 東京タワー等が倒壊しても
様子を見に行かないように!
そして、遼真は同じく武道館に避難していた
小学校のクラスの担任である木村壮一先生に
東京タワーの様子を見てもらうように頼んだ。
遼真
「木村先生!東京タワーが大変なことになってるから、
僕達、その様子を見に行きたいんだ!」
木村
「遼真!お前もここに避難してたのか!
それで、お父さんとお母さんは?」
遼真
「地震起きた時広い公園にいて
友達と一緒に競技場に避難したから
どこにいるかはわからない!でも僕には
お姉ちゃんと未夢姉ちゃんがいるから!」
木村
「わかった!東京タワーの方か!
ちょっとだけ様子を見るだけならいいぞ!」
そして三人は武道館を離れ、木村のバンに乗り、
倒壊した東京タワーに向かった。
皇居の前の通りもボロボロになっていた。
未夢
「あの、東京タワーまでどれくらいかかりますか?」
木村
「まぁ行ってみないとわからない!
とにかく東京タワーに向かおう!」
そして遥達は、バンで倒壊していた街を通り、
倒壊した東京タワーに向かった。
東京タワーの近くに着いた遥達は東京タワーの状況を見ると・・・
遥達は騒然としていた。
未夢
「あっ・・・!」
東京タワーはへし折れて横向きになって崩れ倒れていた。
遥
「東京タワーが・・・」
遼真
「こんな事になっちゃうなって・・・」
そして、木村が三人に先程のバンに戻るように促した。
木村
「もうこれでいいだろ!ここで被害に遭われたら困るから
君達も車の中に戻るんだ!」
遥
「はい・・・。」
そして、遥達は再びバンの中に戻り、次の避難所に向かった。
木村
「三人とも東京タワーはどんな感じだったか?」
未夢
「はい!さっきテレビで
東京タワーが倒壊する映像を観ました!」
遥と遼真は落ち込んでしまった。
遼真
「何度か行ったことあったのにな・・・。」
遥は涙ながらにこう呟いた。
遥
「長年続いたシンボルが・・・
もうなくなってしまうなんて・・・」
遼真は崩壊していた街を眺めて呟いた。
遼真「平和な日常に戻って間もないのに
東京があんな風になるなんて・・・」
更に、遥と未夢も崩壊した東京の事を呟いた。
未夢「今までアタシが遊び回ってた所も、
ほとんど台無しだな。」
遥
「こんなの私達が住めるような街じゃないよ・・・。」
木村
「まぁ、その気持ちはわかるさ、
とにかくもっと安全な場所に行こう!」
遥達は木村にある所に案内された。
木村
「よし、ここだ!」
遥達がたどり着いたのは檜町公園。ここも避難場所として使われている。
遥
「ここって公園?」
木村
「“檜町公園”だ!ここなら余震が来ても大丈夫そうだ!」
するとそこへ、一人の孤独な青年が現れた。
青年
「お前ら、無事だったんだな・・・。
ちょっと俺のテントに入って
話を聞かせたいんだけど・・・。」
遥「え?」
第五章「絆」
避難場所の檜町公園
遥達は孤独な青年が避難しているテントの中に入り、
彼の話を聞くことにした。
青年
「お前達がいるだけで、本当に嬉しかった。
ずっと一人だったから寂しかったよ。」
遥
「本当に1人だったんですか?」
青年
「ああ・・・十数年以上も前からな。」
遥達はざわついた。
遼真
「じゅ、十数年以上も⁉」
青年
「ああ、俺が小学生の頃に、
両親が交通事故で亡くなってしまって、
家を転々としながら暮らしていたから、
誰も信じられないまま成長しちまったんだ。」
未夢は涙ながらに問答した。
未夢
「は?なんで⁉
どうして親戚に引き取らなかったんだよ‼」
青年はそれに答えた。
青年
「いや・・・ジジイもババアも病気を患ってて、
他の親戚も自分の子のこともあったんだよ。」
木村
「そうか、それは大変だったな。でも安心しろ!
俺達は決して怪しいもんじゃないから
これからの人生を俺達で歩んでいこう!
そういえば君、名前は?」
掛
「道野掛。」
掛は身分証明書を木村に見せる。
木村
「お前、長野から来たのか!」
遼真
「年はいくつ?」
掛
「二十九(歳)だ。」
未夢
「ふーん、あんたももうすぐ三十路なんだな。」
遥
「あっ、そう言えば、自己紹介まだでしたね!
私、姉弟で巣鴨から避難してきました
平井 遥って言います。中学二年生です。」
遥はその仲間を紹介した。
遥
「こっちは弟の遼真です。小学三年生で大のゲーム好きで
よく友人とよく遊んでいます!
そっちはこの前から避難先の国立競技場で知り合った
目黒南高校二年の武沢 未夢さん。
とても遊び盛りで見た目はちょいワルですけど、
助け合いや人づかいには気が優しいんです!
そしてこの人は遼真のクラスの担任をしている
木村 壮一 先生です。
特に全クラスの体育の授業やっているので」
掛
「そうか・・・お前らがいるだけで本当に幸せだよ。」
木村
「君は長野生まれだから、いつから東京にいるんだ?」
掛
「ああ、俺は何年もここにいるよ。
両親が亡くなって以降、俺は地元に帰ることなく
居場所を探しながらあてもなく彷徨い
長野から山梨、埼玉、千葉、東京へと流れていったんだ。
小学生から高校生まで友達すらも出来なかったんだ。
誰も俺を頼ってくれる人なんかいなかったんだ。
高校を卒業してフリーターになった俺は上京し、
ここに来てからは
アルバイトを転々としながら生計を立てていた。
しかし最近なってからはバイトをやめて、
仕事も見つからなくなり、
ゴミ箱に捨てられていた古新聞や雑誌を売っての
生活をするようになったんだ。
けど、今になって俺の運命を
大きく変えることになったんだ!」
遥
「え?その運命ですか?」
未夢
「それって何の事だ?」
掛
「ああ、それはこの大地震が起きた後、
俺は小さな命を救ったんだ。」
遼真
「小さな命って?なんの事?」
掛
「ああ、それはな・・・。」
それは首都圏での巨大地震発生の当日のことだった。
掛は大地震で被災された都内の住宅街を彷徨っていた。
財布の中の金は無事だった。
掛
「金は無事だったけど、今日の晩飯どうしようかな?」
すると倒壊した住宅の方から
助けを求める小さな女の子が聞こえた。
女の子
「たちけて・・・!たちけて・・・!」
掛
「え・・・?」
その女の子は留守番中に大地震が起きた時に
家屋が崩れて下敷きになり、
血だらけの状態で動けなくなっていた。
女の子
「パパアァー‼ママアァー‼」
掛はその女の子の声に気づいた。
掛
「そうだ!助けなきゃ!あの女の子を助けなきゃ‼」
勇気を出した掛は女の子を助け始めた。
掛
「大丈夫だ!今俺が助けてやるからな!」
そして掛はその女の子を倒壊した家屋から引きずり出して助けた。
女の子
「パパァ・・・ママァ・・・」
掛
「君、大丈夫か?しっかりするんだ。
すぐに病院まで連れてってやるからな。
俺がいたからにはもう安心だ。」
掛はその後、その女の子を病院まで連れていった。
掛
「俺はこの後、この子供を病院まで届けたんだ。
この事で俺は、人助けや思いやりが
できるようになったんだ。」
遥
「私もこの地震が起きた時、子供を救ったことがあります!
地蔵通り商店街で買い物を済ませて家に帰る時に、
物凄い大きな地震が起きて、急いで家に帰る時に、
その家に下敷きにされた男の子を
軽トラックの運転手さんに手伝ってもらいました!」
未夢
「アタシもそうだったよ!原宿へ買い物に出かけた時、
ものすごく大きな地震が発生して
通行人の悲鳴がアチコチに聞こえてたんだ!」
掛
「なるほど、お前達もあの時の事を知ってるんだな。」
木村
「ああ、確かにそうだろうな!皆、腹減ってきただろう?
そろそろ晩飯にするか!」
木村が炊き出しの所へ行き、皆の食事を差し出した。
木村
「ほら、今日の晩飯は、炊き出しのカレーだ!
みんなで一緒に食おう!」
そして、掛はカレーライスを1口食べた。すると・・・
掛
「うっ・・・うっうっ、うめぇー‼
久しぶりのカレーだ‼最高だよ‼
俺、カレーめっちゃ大好物だよ‼」
掛はカレーライスが大好物だったので、
大食いするようにおいしそうに食べた。
遥
「カレーが、好きなんですね!」
未夢
「ここに避難して、本当に良かったな!掛!」
避難所の仮設風呂
桜の湯には、遥と未夢が入浴している。
遥
「はぁ~極楽~・・・ここのお風呂も気持ちいいなぁ~。」
未夢
「ああ、アタシもだよ!避難所の風呂ってもんは、
心と体も温ったまるよなぁ。」
そして未夢は楽しそうに遥に肩をより合わせた。
未夢
「女同士での裸の付き合いは
とても最高だよな!アハハハハ!」
遥
「ええ?別にそんな事・・・」
一方その頃、松の湯では、遼真と掛と木村が入浴していた。
遼真
「掛兄ちゃん、お風呂、どうかな?」
掛
「ああ、いい気持ちだよ。俺はよく銭湯に行ってるからな。」
遼真
「へぇそうなんだ!」
木村
「やっぱ皆で入ると、一緒にいる気分だな。」
とりあえず、入浴した後はテントの中で遥達は就寝。
そして檜町公園の夜は更けていった。
第六章「探索」
令和七年(二〇二五年)五月三日(土)
関東地方でM8.8の巨大地震が発生し、
今も復旧は進まない。
秋葉原や原宿、池袋、上野等の観光地もすべて崩壊しており、
住宅街は大規模火災やコンクリート塀が倒壊し、
七十三万棟が全壊した。
多摩西部では大規模な土砂災害が発生した。
東京都内は今でも、酷い状況が続いている。
日比谷公園
ある日遥達は日比谷公園で、食事をしていた。
未夢
「ハムッ!いやぁ~うめぇーな!」
遥
「掛さんが仲間に加わってもう数日経ちましたね。」
未夢は掛に配給のたこ焼きを差し渡した。
未夢
「ほら、たこ焼きでも食えよ!」
掛
「はい・・・いただきます。」
掛はたこ焼きを一口にした。
掛
「いやぁ~避難所のたこ焼きもなかなかのもんだな。」
木村
「それもそうだな。
こうやってみんなで食べるのもいいじゃないか!」
掛
「ああそうだな。」
すると掛はあることに閃いた。
掛
「そうだ!俺、ちょっと探索したいところがあるんだ!」
遥
「え?それって?」
遼真
「どんな所?」
掛
「銀座へ行きたいな。」
遥
「銀座?」
そして、銀座にやってきた遥達は、
大地震でボロボロになっていたデパートを見つけた。
遥
「掛さん、ここは・・・?」
掛
「銀座〇越だ!ここなら何でもありそうだから
色々補充できそうだな!」
遥
「でも、しかし・・・。」
しかし、遥はそのデパートでの探索には全く乗り気ではなかったが
弟の遼真は平気で遥にこう伝えた。
遼真
「大丈夫だよお姉ちゃん!この懐中電灯さえあれば、
暗くても大丈夫だよ!」
木村
「確かに気味悪りぃな。君たち補充が終わったら、
すぐにここに戻るんだぞ!」
未夢
「よし!行ってみるか!」
そして、遥達はデパートの中を探索始めた。
ポイント⑦ 地震で荒れ果てている建物は
危険なので、絶対に入らないように!
銀座〇越の内部
大地震で停電して荒れ果てていた
デパートのフロアを探索している遼真と未夢。
そこはもう真っ暗でフロアは不気味だった。
未夢
「ずいぶん気味悪いなぁ~。お前、本当に大丈夫なのか?」
未夢は不安そうだが、遼真はそれでも平気だった。
遼真
「大丈夫だよ!僕は林間学校で
何度か肝試しをしたことあるからね!」
すると遼真はあるものを見つける。
遼真
「あっ、あれって!」
遼真はその場所をに向かった。
未夢
「待て、遼真!走ったら危ないぞ!」
遼真が見つけたのは、
スーパーアイドル“ビタミンズ”のポスターだった。
遼真
「未夢姉ちゃん!これ、ビタミンズのポスターだよね?」
未夢
「ああ、そうだ!あの大人気スーパーアイドルの事だな!
アタシ、CD何枚か持ってるし、
友達とライブも観に行ったこともあるからな!」
そして、遼真は再びある物を発見した。
遼真
「やったぁ!マミーボだ!
ミカちゃんのマミーボ、ずっと欲しかったよ‼」
未夢は慌てて遼真に注意する。
未夢
「ちょっと遼真!これ人の物かもしれないんだぞ‼」
ポイント⑧ 落ちている遺失物は勝手に拾わないように!
そして一方、地下の食品売り場で掛は
食料や飲料を補充していた。
掛
「よし、補充はこれでOKだ。
後はレジで金とメモを置いて皆を待つか。」
そして別のフロア、遥は不安そうにデパートの探索をしていた。
遥
「なんだか怖いなぁ・・・
ボロボロになった
デパートなんか気持ち悪いよぉ・・・。」
遥は緊張しながら先に進んだ。
そこの売り場に懐中電灯を照らすと
そこには棚の下敷きなっていた
血まみれの店員の死体を発見した。
遥はあまりの怖さに懐中電灯を落とし、悲鳴を上げた。
カタン!
遥
「い・・・い・・・いやああああああ
あああああああああ‼‼‼‼」
遥の悲鳴は他のエリアに響き渡った。
掛
「なんだ?」
未夢
「今のは・・・?」
遼真
「お姉ちゃんの声だ!」
遥は絶望して泣き崩れた。
遥
「もう嫌だ‼もうこの世にいるのは嫌だぁぁぁ‼」
そして、階段のところにいる掛達は・・・
掛
「遥はどこにいるかわかるか?」
未夢は遥の泣き声の方に耳を傾けて・・・
未夢
「三階の方にいる!」
そして三人は遥のいる三階フロアに向かった。
遥
「うわぁ~んもう嫌だよぉ~!」
遥が一人で泣きじゃくってると、未夢達が駆けつけてきた。
未夢
「遥‼アタシ達がいたからにはもう大丈夫だ‼」
しかし、遥はまだ怯えていた。
遼真
「お姉ちゃん、大丈夫だよ!もうここを出よう!」
掛
「何やってるんだよ遥!怯えてる場合じゃないぞ‼
また余震が発生したら、
デパートが崩れるかもしれないんだぞ‼」
遥は泣きながら呟いた。
遥
「え・・・?ぐすっ・・・本当に崩れちゃうの・・・?」
未夢
「当たり前だろ!早く脱出しないと
アタシ達天井に押し潰されるんだぞ!」
そして、未夢達は泣き崩れた遥をつまみ出した。
未夢
「もう時間がない‼さぁ行くぞ遥‼」
掛
「急げ!急ぐんだ‼」
遼真
「動いてよお姉ちゃん‼」
デパートの入口に木村が待ち伏せていた。
木村
「いよいよ戻ってくるみたいだ。」
すると全速力で遥が木村に抱き着いた。
木村
「は、遥!」
そして、未夢達も探索から戻ってきた。
未夢
「木村さん、戻ってきました!」
遥は足に違和感を感じていた。
遥
「あじが~いだいよぉ~!」
未夢
「どうした遥、足が痛いのか?」
遼真
「そうだ!僕が確かめてみるよ!」
遼真が遥の靴下をめくると遥の足には傷がついていた。
遼真
「お姉ちゃん!足に傷がついてる‼」
その傷はデパートの階段から駆け降りるときに転んでしまったようだった。
すると、偶然避難所の医療スペースに戻る途中の少女に出会う。
少女
「足に傷がついてるって言ってましたよね?」
木村は遥の事について少女に伝えた。
木村
「この子の事だ!どこか落ち着かせる場所とかあるか?」
少女
「あっ!近くに歌舞伎座があります。さぁこちらです。」
遥達はその少女についていき、歌舞伎座へ向かった。
歌舞伎座内部
暗い劇場内にライトを照らし本舞台いる遥達。
少女は遥傷の右足を消毒し、その傷に絆創膏を貼って手当てをした。
少女
「はい、これでもう大丈夫ですよ。」
遥
「はぁ・・・はぁ・・・ありがとう・・・。死ぬかと思ったよぉ・・・。」
遥は安心したせいか、疲れ果てていた。
木村
「君は本当に天才だよな。」
頼子
「はい!あの私、高輪医療大学教授の娘の泉頼子です。
高校一年生です。これから日比谷公園の
避難所に戻る所でした。
私のお父さんは今、避難所の医務係をしているので。」
掛
「なるほど、お前は賢いんだな!
大学教授の娘だなんて凄いもんだな。」
遼真
「お姉ちゃん、まだ興奮が収まらないね。
未夢姉ちゃん、お水あるかな?」
未夢
「あぁ、水なら避難所から補充して冷やしてあるさ!」
未夢は心に傷を負ったままである遥に水を差し出した。
未夢
「遥、ほら、冷たい水だ。これ飲んで、心癒せよ!」
遥はペットボトルの水を飲んだ。
遥
「はぁ・・・ありがとう。少し心も落ち着いてきた。」
頼子
「良かったですね。あなた達は何をしてたんですか?」
掛
「俺達は、さっきのデパートで
いろいろ補充するために探索してたんだ。」
頼子
「なるほど、これは大変でしたね。」
遼真が懐中電灯で歌舞伎座内部を見回していると
遼真
「歌舞伎座の中ってとても凄いなぁ~!
あそこからはお客さんもいっぱい来てそうで
なんだか僕達、ステージにいるみたいだよ!」
頼子
「ええ、私達がいるのは本舞台にいるんです。
本来なら歌舞伎役者さんが演劇をされております!」
未夢
「まぁ、電気も止まってるから暗くて見えにくいけどな。」
木村
「あぁ、歌舞伎か!復興が終わったら、
またここで歌舞伎ができるようになるんだな!」
頼子
「はい!そうですよね。それではここを出て、
避難所に戻りましょうか。」
遥達
「ハイ!」
しかし、ここから東京に思わぬ
悲劇が襲い掛かってしまうのだった。
気象庁本庁
気象庁職員が日本列島の状況確認すると
富士山に噴火していることに気づいた。
気象庁職員
「あっ・・・‼た、大変です‼只今の静岡と山梨で
震度7の地震による誘発で富士山が噴火しています‼
直ちに国民に避難要請をお願いします‼」
気象庁の職員らは富士山が噴火しているのを騒然としていた。
後に、富士山の火山灰は首都圏へと降灰していく。
ポイント⑨ 巨大地震はマグニチュードの大きさにより
地震を誘発することもある。
宝永地震や東日本大震災等でも
同様のケースで発生しており
東海地方の場合、揺れが強いと
富士山が大噴火するケースもある。
大規模地震が発生すると火山活動が
活発化することも珍しい事ではない。
また、熊本地震が発生した直後には
阿蘇山の爆発噴火も発生している。
第七章「大混乱」
ある日の事、
山梨と静岡などの東海地方で
最大震度7の直下型地震の誘発により
富士山が爆発的に大噴火した。
ドッカーーーーーーーン‼
その火山灰は首都圏に広がり、東京都内にまで広がり、
浅草の雷門や東京ドーム、
被災された都心の高層ビル、住宅街、
東京駅、羽田空港までにも火山灰が首都圏中に蔓延んだ。
パラパラパラパラパラパラパラパラパラ
ポイント⑩ 巨大地震が発生すると津波だけじゃなく、
活火山にダメージを受け、
その地震の誘発によって
火山が噴火する恐れがある。
現在の活火山の中には
富士山も含まれているため
特に、南海トラフ巨大地震が発生すると
富士山が噴火しやすい。
富士山は三百年以上も
マグマを溜めて続けているので、
いつ噴火してもおかしくない。
東京都内に火山灰が降灰し、
富士山の大規模噴火で都内の人が大混乱に陥っている。
男性
「早くバスに乗り込め!
火山灰は人的被害をもたらすぞ!」
女性
「早くバスに乗って!駅の入り口はダメ!」
避難民は数台のバスに乗り込んで、
ある所へ分散避難した。
皇居前広場にも数台のバスが停車しており
観光バスに大勢の避難者が乗り込んだ。
避難係
「早くバスに乗車してください‼
人的被害をもたらしますよ‼」
観光バスの中には避難民が大勢おり、
その中には遥達も乗車していた。
遥は富士山が噴火した事で物凄く怯えており、
弟の遼真が落ち着かせようとしている。
遥
「いやああああああああ‼
もう嫌だあああああああああああ‼」
遼真
「お姉ちゃん!大丈夫だよ‼」
そして、乗車してる他の避難民も
子供
「うわぁ~ん!怖いよ~‼」
子供の母
「大丈夫よ!」
男子高校生①
「ウソだろ・・・」
男子高校生②
「富士山噴火ってやべぇじゃん!」
運転士
「心配ありません!
とにかく安全な建物に皆さんを避難させます!」
そして、観光バスは急発進し、猛スピードで行き着くところまで向かった。
ブーーーーーーーーーーーーーーーン
両国国技館
電気が止まっている国技館内部。
座り込んでる木村が目を開け、
真っ暗な国技館内部を周辺を見回し、
その場で立ち上がり、皆がいるかを呼び掛けた。
木村
「おーい‼皆いるかー‼」
そして、遥、遼真、掛が懐中電灯を木村の方に照らした。
遥達はこの内部に避難が確認されたが、未夢の姿だけは。
木村
「君達、無事だったな。ところで、未夢は?」
遼真
「どこかにいるかもしれないよ‼」
掛
「とにかく、手分けして探そう!」
未夢が内部のどこかにいるかもしれないと聞き入れ、
未夢の安否を確認するために懐中電灯で周囲を見回し、
遥達は国技館内部で、未夢を呼び掛けた。
木村
「おーい未夢ー‼」
掛
「未夢‼いるかー‼いるなら返事しろ‼」
遥
「未夢さーん‼」
遼真
「未夢姉ちゃーん‼」
結局、周囲に呼び掛けても未夢の姿はどこにもなかった。
木村
「ここにはいないみたいだ。」
掛
「逃げ遅れたかもしれないな・・・。」
遼真
「大丈夫だよ‼とりあえず入口まで行って、
未夢姉ちゃんを出迎えよう!
そしたら未夢姉ちゃんに会えるかもしれないよ!」
エントランスホールに向かった遥達は
出口の方に懐中電灯を照らしていると、
そこにはふらついている未夢を発見した。
そう、未夢は逃げ遅れて、遥達の後を追って
国技館に避難して来たのだった。
しかも、高熱が出て汗がたくさん出るほど苦しんでいた。
未夢
「みん・・・な・・・」
遥
「あっ、未夢さん!」
未夢
「ここに・・・い・・・たんだ・・・なぁ・・・」
すると未夢が富士山の噴火の火山灰による硫化水素中毒で
その場で倒れてしまった。
ドサッ!
すると未夢の方に遥達が集まって・・・
遥
「未夢さん‼」
遼真
「未夢姉ちゃん‼」
木村
「未夢‼大丈夫か⁉しっかりしろ‼」
するとそこへ、巡回中の自衛隊員が現れた。
自衛隊員
「待て!そいつに近づくな‼」
遥
「えっ、なんで?」
自衛隊員
「そいつは富士山の噴火で硫化水素のガスが混ざった
火山灰に巻き込まれたらしい。」
遼真
「硫化水素?」
自衛隊員
「とにかく災害に強い総合病院に
そいつを運んで行くんだ!
そこの病院なら、消防隊員もいるし、
発電もしていて大丈夫そうだ。」
遥達は硫化水素中毒で倒れた未夢を、
災害に強い総合病院まで搬送した。
ポイント⑪
富士山の噴火によって
火山灰や硫化水素中毒による
人的被害をもたらす恐れがある。
都内の某総合病院
集中治療室に隔離されて治療を受ける未夢。
ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・
その待合室のベンチには、遥と遼真と掛と木村が座っていた。
その中で、遥は涙をこぼしてすすり泣きながら呟いた。
遥
「未夢さんがはぐれなかったら・・・ぐすっ
こんな事には・・・ならなかったのに・・・ぐすっ‼」
すると看護婦が遥達の所へ来てこう伝えた。
看護婦
「皆さん、大丈夫です!
未夢さんの治療を必ず成功させてみせますから‼」
遼真は強気にこう告げた。
遼真
「分かってるよ。未夢姉ちゃんは死なないよ!
パパやママがいなくたって、
僕にはお姉ちゃんと木村先生と
掛兄ちゃんがいるんだから!
大丈夫だ、絶対大丈夫‼」
掛
「ここで待ってても仕方ない!
とりあえずロビーに行こう!」
木村
「ああ、そうだな。」
そして、遥達が病院のロビーに行ってみると
遥
「あっ・・・こ、これは⁉」
そこには消防隊員や医師、ケガ人や病人、
避難民が大勢いた。
掛
「この病院には患者が溢れかえっているんだ!
つまり、ちょっと前までのコロナ禍と同じ状況さ。
その中には未夢と同じように
富士山の噴火による健康被害を受けてる人も
たくさんいるんだ!」
遼真
「未夢姉ちゃんだけじゃなかったんだ‼」
遥
「まさか、あんなことになるなんて・・・」
ポイント⑫
この様な震災が発生すると、患者が大幅に増加し
伝染病や疫病の流行と同じように
医療が崩壊しかねなくなる。
そこへ、遥が通う巣鴨中学校の教師の
堀田文子先生がやってきた。
堀田
「あなたは二年一組の平井 遥さんですよね。」
遥
「あっ!堀田先生!」
堀田
「手芸部の顧問の先生なんですか
ちょっとこちらに来てもらえませんか?」
遥
「顧問ですか?」
そして、遥は堀田先生の言う通り、
とある場所に案内された。
遼真
「こ、ここって?」
掛
「遺体安置所じゃないか!」
遥達が案内されたのは、
病院内の特設された遺体安置所だった。
木村
「気味が悪りぃな。震災による犠牲者が
ここで眠ってるとはな・・・。」
すると、堀田先生が遥達にある遺体を紹介した。
堀田
「こちらです。手芸部の顧問の細川奏子先生です。
今回の巨大地震で犠牲になられたらしいです。」
そして遥は・・・
遥
「あ・・・あぁ・・・」
泣きながら絶望してしまった。
遥
「細川先生‼どうして死んじゃったの⁉
ぐすっ・・・何でぇ・・・、何で死んじゃったの⁉
ねぇ、細川先生‼」
遥は顧問の死を受け入れることができず、
その場でオイオイ泣き崩れてしまった。
その頃 ———
他道府県でも震災によって大きな影響が出ている。
北海道札幌市某所
サラリーマン①
「東京で巨大地震が発生して
富士山が噴火したらしいよな。」
サラリーマン②
「十四年前の東日本大震災の時は
震度6強が起きたのに噴火しなかったのにな。」
サラリーマン③
「いやぁしかし、北海道もいつかは
千島海溝沿いで巨大地震が起きて、
津波だけじゃなく有珠山とか樽前山とか
十勝岳とかが噴火したら
札幌もあんな風になるだろうな。」
ポイント⑬
他の地方でも大きな騒ぎになり
その後の震災の事で思い浮かべてしまう人もいる。
兵庫県のとある中学校
男子中学生①
「知ってるか、この前のゴールデンウィークに
東京で巨大地震が起きたこと。」
女子中学生
「あっ知ってる!連日臨時ニュースやってるから
富士山も噴火したからね。」
男子中学生①
「いわゆる、“七五三地震”だ。」
男子中学生②
「七五三地震⁉」
男子中学生③
「何それ、子供の成長を祝う行事か⁉」
男子中学生①
「いや、語呂合わせだ。
発生日が令和7年5月3日。つまり、七五三地震だ!」
男子中学生③
「うまいこと言うな・・・お前。」
ポイント⑭ 震災が起きると日時によっては
この様な言葉が囁かれる事もある。
SNSや掲示板サイトではデマなどが
大きく広まっている。
サイバー①
「フフフ・・・」
サイバーがパソコンで何かを書き込んでいる。
カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカチッ!
「あの地震は人工地震だ。」
「これはディープステート側の仕業だW」
等の虚構の情報を書き込んで
ユーザーの感情を煽るような書き込みや
サイバー②
「ウフフフ・・・」
サイバーがスマホで何かを書き込んでる。
「もうすぐ東京にマフィアがやってくるぞ。」
「地震のせいで上野動物園から
ライオンやワニが逃げ出した。」
等のデマを書き込んで被災者や国民を煽る等の行為で
とにかく注目を集めようとしている悪質な書き込みが
ネット上を駆け巡っていった。
ポイント⑮ この様な書き込みは極めて悪質な行為であり
過去には同様のケースで逮捕者も出ている。
国民や被災者を煽るような書き込みや
反感を買う書き込みは絶対にやめよう。
更に、交通機関にも影響が出ている。
広島駅
アナウンス
「東京方面の列車は当分の間運行を停止いたします。」
出張に行っていた男性が困っていた。
サラリーマン
「あぁ・・・これじゃ東京に帰れないな。」
ポイント⑯ 前述の通り、大震災が起きると
鉄道にも大きな影響を与える。
鹿児島空港
空港管理人
「いかん!このままでは
東京方面の便にも大きな影響が出る!」
公務員
「富士山が噴火した事で火山灰が関東地方に蔓延し、
恐らく航空機に損傷をもたらす事に違いありません!」
空港スタッフ
「お母様から、
“上京してる娘の所に行きたい”と連絡が・・・」
航空管理人
「残念だが、それは無理だ。お断りしてくれ。」
ポイント⑰
大震災が起きると遠方の場合は
家族にも会うことができない。
第八章「意気込み」
総合病院の広場
震災によって、悲しみと辛さに暮れる避難民達。
低体温を防ぐために毛布を掛けて座り込む親子や
妊娠中の女性や子供を膝の上にのせて寝かせる母親や
ベンチに座り込む父子等がいた。
東京は今も尚、震災によって深刻な影響をもたらしている。
未夢のラジオで臨時報道を聴く遥達。
ニュースも東京ではなく、大阪の放送局から流れている。
キャスター
「関東地方は現在も富士山の噴火によって
重大な被害が続いています。」
遼真
「今日もラジオ局はいつもと違う気がするね。」
掛
「大阪からだろうな。
きっと東京の放送局も放送できないんだよ。」
ポイント⑱
放送局が巨大災害で放送できない時は
他の地方の放送局に切り替えられる場合がある。
そんな時、二人の女性が食糧を差し入れにやって来た。
その二人は女優の“大瀬鈴子”とそのマネージャーである。
遥
「あっ、あなたは女優の大瀬鈴子さんですよね?
どうしてこの避難所に来たんですか?」
大瀬
「撮影現場が被災されて収録がしばらくできないようです。
今は食糧と水を避難所の人に届ける
ボランティアをしているので。」
ポイント⑲
震災が起きると、撮影現場が被災された場合は
収録不能となり、映画やドラマ等の制作にも
大きな影響を与える。
遥達は大瀬が食料を差し出す様子を見に行った。
大瀬「ごめんね。食糧持ってきたけど
少ないから皆で分けて食べてね。」
そのテーブルには僅かながらの食糧が置いてあった。
女性
「いやぁここはもう酷いんもんだねぇ。」
遥
「ええ・・・。」
遥が元の場所に戻ると
遥
「ねぇ遼真、未夢さんが持ってきた食糧まだあるかな?」
遼真
「ほとんど食べ切っちゃったから
そんなに残ってないよ。」
未夢が持ってきた食糧はほとんど減ってしまった。
遼真が未夢の鞄を漁っていると、
その中から一枚の写真を見つけた。
遼真
「これは・・・未夢姉ちゃんの写真だ‼」
この写真は去年のハロウィンに撮影された未夢のコスプレ写真だった。
掛
「どうしてこんなモンが入ってたんだ⁉」
遥
「ここって渋谷のハチ公前広場?」
遼真
「それだよ‼これ去年のハロウィンの時だよ!
忘れられないからって未夢姉ちゃんが
とっておいたんだよ!」
木村
「そうか、その写真は未夢の大切な思い出だったのか‼」
すると、女の子の泣き声が聞こえた。
女の子
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁん‼
あーーーーーーーーーん‼」
遥
「えっ、何?」
遼真
「お姉ちゃん、こっち!」
遥と遼真は泣き声の持ち主の女の子の方へ行くと、
そこには大瀬もいた。
遥
「大瀬さん、この子供は?」
大瀬
「この子はおつかいに行った時に
今回の大地震に遭ってしまい
家に帰れなくなったらしいですが、
ご両親に会いたくなって急に泣き出してしまいました。
私が一生懸命慰めようとしていますが。」
女の子
「うわああああん‼パパァ~‼ママァ~‼
会いたいよぉ~‼」
遼真
「僕だって会いたいけど、
皆で頑張って生きなきゃダメだよ!」
遥
「そうだよ!
パパとママはどこかにいるから心配しないで!」
そして一方、掛は震災で職を失った
男性に食糧を差し出した。
掛
「これ、お前にやるよ。」
男性
「あ・・・ありがとう・・・」
掛
「どうした?そんなに避難生活が辛いのか?」
男性
「いや・・・実は今回の震災で、
勤め先の会社が潰れることになったんだ・・・。」
掛
「そりゃそうだな。巨大災害で都内の会社が
相次いで倒産してるからな。」
ポイント⑳
この様な震災が起きると被災された場合
倒産する会社や企業が増加する恐れがある。
遥と大瀬は毛布を掛けて座り込む女子高生に話しかける。
大瀬
「どちらにお住まいでしょうか?」
女子高生
「八王子の方です。」
遥
「八王子・・・年はいくつぐらいですか?」
女子高生
「十七歳で、高校三年生です。
今年、修学旅行で奈良と京都へ行くはずでしたが・・・」
女子高生は涙ながらにこう話した。
女子高生
「新幹線も大災害で運行を停止して、
修学旅行は今年、中止になってしまったんです・・・。」
ポイント㉑ 震災が起きると修学旅行や部活動等の
学校行事にも大きな影響を与える。
遥
「私も同じ境遇なんです!
ゴールデンウィークに
家族みんなで大阪万博に行くはずでした!
あの大地震で行けなくなったので、
大変な目に遭っているんです!」
一方、木村はその親子に食糧を渡した。
木村
「もしよかったらコレをどうぞ。」
女性
「ありがとうございます・・・。」
木村
「どちらに住まわれているんですか?」
女性
「町田の方です。
小田急電鉄も全線ストップしてダメになったので、
家に帰れなくて
この子を抱えて、ここに避難してきました。
この子には三つ上の兄がいて、
私には夫がいるのですが・・・
避難するときにはぐれちゃったかも・・・」
すると、広場内で大きな余震が発生した。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ガシャーン!ガラガラガラ
子供の泣き声や避難民の悲鳴が響き、広場中に響いた。
遼真はラジオを庇った。
キャスター
「只今、関東地方が激しく大きく揺れています!」
そして地震は一瞬にして収まった。
掛
「収まったか?」
遥は子供達を庇い・・・
遥
「怖かったね。大丈夫だった?」
そして一人の女性が涙ながらにこう言った。
女性
「東京は・・・どうなってしまうのよ‼」
そして、子供達やその避難者のほとんどが
あまりの辛さや悲しみに泣き崩れてしまった。
遥はある事に思いつき、避難民の前でこう伝えた。
遥
「みんな、私の話をよく聞いて!
辛いのはみんな一緒!
みんなで一緒に生きれば幸せになれるんだよ!」
遼真
「お姉ちゃんの言う通り!皆で力を合わせて生きていけば
東京もいつかは復興するよ!」
その後、
遥が廊下を歩き回っているとスマホから着信音が鳴った。
ピロピロピロピロ♪ピロピロピロピロ♪
遥はその着信に応答すると
遥
「もしもし、遥だけど。」
幹
「ハルちゃん・・・今どこにいるの・・・?」
遥
「えっ、幹⁉
今私、総合病院の中だけど
幹こそ、どこにいるの?」
そう、電話がかかって来た相手は
崩れかけたビルに閉じ込められた親友の幹だった。
幹
「今・・・私、崩れかけた・・・ビルの中にいるんだけど・・・
中々・・・ここから・・・出られなくなって・・・」
遥
「大丈夫だよ!レスキュー隊員が
幹の事を助けてくれるからね。」
幹
「うん・・・ありがとう・・・ハルちゃん・・・
ずっと・・・友達だから・・・」
ツーツーツー
幹との連絡は途切れた。
広場に戻った遥は仲間にこう伝えた。
遥
「友達から電話があったみたいだよ。」
掛
「え?ようやく着信が繋がったのか?」
遥
「うん、幹が崩れかけたビルの中にいるって・・・」
遼真
「幹お姉ちゃんがビルの中に閉じ込められたの⁉」
木村
「これは救出するのも大変そうだな!」
すると、ラジオから新しい情報が入ってきた。
キャスター
「たった今、入ってきた情報です!」
遥
「何?」
キャスター
「原宿のビルに複数の人が救出されました!」
遼真
「お姉ちゃんが言ってたのこのビルじゃない⁉」
キャスター
「今救出されたのは、三十代くらいの男性です!
包帯が巻かれていますが、意識はあるようです!」
木村
「なんだよ!あの子じゃないのかよ!」
掛
「いや、あのビルは崩れかけた瓦礫とかがあって、
奴を救出することはかなり難しいんだ。」
遥
「え、そんな!」
ポイント㉒
崩れかけた建物は救出が困難な場所もある。
すると、再び物凄く強い揺れを感じた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタ
そして、揺れがされに増し、
その余震は病院の広場でも発生した。
遥達はそれに気づいて・・・
ドカーン‼
遥
「キャッ!」
そして、机等が倒れ、備蓄品も崩れ落ち、最大の余震が発生した。
ゴオオオオオ‼
ガシャーン‼バタン‼
キャスター
「今、東京都内が激しく大きく揺れています‼」
多くの避難民が身を寄せている、
キャスター
「震度6強です‼震度6強です‼」
遥は幹の事を心配した。
遥
「幹・・・!」
崩れていくビルを思い浮かべながら
幹の言葉を思い出した。
幹
「ずっと・・・友達だから・・・」
遥
「幹ィィィィィィィィィィ————ッ‼」
第九章「思い出」
令和七年(二〇二五年)五月三日(土)に発生した
令和史上最悪の
関東地方と東海地方での巨大地震の誘発により
富士山が噴火したことで、
首都圏に最悪の被害をもたらしていた。
東名高速道路等も全面的に通行不可となり、
鉄道も航空便も運行を停止。
火山灰の降灰により首都圏のほとんどが停電し、
ガスや水道も使えず、
首都圏のインフラ等の機能が全て停止してしまった。
世界各国は新型コロナウイルスの流行が終息して行き
平和な日常が徐々に戻りつつある中・・・
日本だけ時代に取り残されながら
震災による恐慌や不況等で更なる
貧困が巻き起こっていた。
東京都は壊滅的な被害に遭ったことにより
当然、復旧作業も進むこともなく
震災への復興も滞ってしまった。
遂に東京は首都機能完全停止に
追い込まれる事になってしまった。
総合病院の広場
悲しみと辛さに暮れている避難民達。
未夢のラジオには首都機能移転の事について、
報道されていた。
キャスター
「国内史上最多の死者、行方不明者を出した
前代未聞となる令和関東・東海大震災ですが、
日本の首都中枢機能を損失する以上の
重大な被害をもたらしており
日本は今後、国家非常事態になる見込みです。
尚、復興や今後の日本の首都については
全国知事会議や日本をはじめ、ロシア、イタリア
アメリカ・イギリス ・フランス・中国等と共に
国際会議が近々開かれる模様です。」
その報道を聴いた遼真達は落ち込みながらこう呟いた。
遼真
「こんな生活いつまで続くんだろう・・・
パパやママやクラスのみんなはどうしてるかな?」
掛
「もうどうしようもならねぇよ。
東京は壊滅してしまってもうボロボロだ。」
木村
「政府と知事と自治体の力だけじゃ
東京都の復興はほぼ無理だな・・・。」
しかし、その時・・・
遥
「そんなの・・・」
遼真・掛・木村
「え?」
遥はそれを強気に否定した。
遥
「そんなの・・・!絶対あり得ないよ‼」
遼真
「お姉ちゃん・・・」
掛
「遥・・・」
遥は涙ながらに皆にこう伝えた。
遥
「私達は日本の首都・東京で生まれたんだよ・・・。
東京が壊滅しちゃったら・・・。」
遥の場所に皆が集まる。
遥
「もう日本はおしまいなんだよ!」
サングラスの若者が遥にこう伝えた。
若者
「何だよおしまいって、
首都を移せばいいだけの話だろ?」
しかし、遥は首都移転を拒んだ。
遥
「首都が移るのだけは絶対嫌だ・・・!
私達は日本の中枢で生まれてきたんだよ・・・。
東京は日本の中心地・・・
それが日本の首都だから・・・!」
遥は首都機能移転を許せなかった。
すると、老人が腹を立ててこう発言した。
老人
「生意気言う奴が馬鹿なことを言うな‼
何もわからんくせに‼」
だが、その言葉を全く信じない遥は
怒号して暴言を吐いた。
遥
「何だよ‼わかんないから皆に言ってるんだよ‼
こんなの私達の日本じゃないんだ‼」
激昂した遥は逃げるように病院の広場を走り去ったが
遼真が遥を追いかけようとしていた。
遼真
「お姉ちゃん、待って‼」
しかし、担任の木村に制止されてしまった。
木村
「遼真、よせ!」
そして、遥の姿はそれっきり見えなくなってしまった。
遼真
「あぁ・・・。」
巨大地震や火山灰などで荒廃した東京都内
遥は荒廃した終日真っ暗で薄寒い東京を彷徨っていた。
遥の衣服は倒壊した建物の瓦礫の煤や煙、
火山灰等ですっかり汚れてしまった。
毛髪や顔や足も煤や泥で汚れた上、
傷だらけでボロボロだった。
そして遥はその場で悲しくこう呟いた。
遥
「私達は、何のためにここにいるの・・・?」
遥の顔は涙でどんどん崩れていく。
遥
「何で東京で生まれたんだろう・・・?
どうしてこんな事になっちゃったんだろう・・・?」
遥の顔は更にぐちゃぐちゃになっていく。
遥
「東京に生まれてこなければ・・・
こんな不幸な事に巻きまれなかったのに・・・」
遥は東京で生まれたことに悔やんでも悔やみきれず
その場で座り込み、
東京が地震と噴火で被災された事による
悲しみと辛さに耐えかね、
吠えるように大声を上げて泣き叫んだ。
遥の泣き声は荒廃した東京都心に
こだまするように響いた。
ポイント㉒
この震災が大げさに思えるかもしれないが
日本でもこの様な最悪の大震災が
現実的に発生することも
決して珍しい事ではない。
また、首都圏である関東地方でも
当たり前のように、
今後は過去の震災を上回る程重大な被害を受ける
巨大地震が発生するリスクも出ているので
この様な震災はいつ発生してもおかしくない。
荒廃した都内を走るクローラー車。
そのクローラー車の中には
夫と子供のいる病院に向かう母親の芳子が乗っていた。
すると、一人の自衛隊員が遥と思われる少女を見つけた。
自衛隊員①
「あそこに誰かいます!」
自衛隊員②
「あれは、女の子か?」
芳子
「あれは・・・」
芳子は娘の遥だとわかった。
芳子
「私の娘だわ‼」
芳子は遥を乗せるために遥のそばにクローラー車を止めるように伝えた。
芳子
「ここで止めてください!この子は私の娘なんです!
この子を乗せて総合病院に向かいます!」
そして芳子はクローラー車から降り、遥を迎えた。
芳子
「遥‼遥じゃないの⁉」
遥は泣き腫らしていた。
泣きすぎたせいで記憶を失っており、
母親だとわからなかった。
遥
「え・・・?誰・・・?誰なの・・・?」
芳子
「私よ!お母さんよ!」
遥
「え?私に言ってるの・・・?
なんで、あなたが私のお母さん・・・?」
芳子は家族写真を娘の遥に見せながら説得させた。
芳子
「当たり前よ!家族で撮った写真を思い出しなさい‼
それを見たらわかるでしょ⁉」
遥
「あっ・・・!ああぁぁ・・・。」
そして、家族写真を見て意識を失った遥の脳裏には
自分の今までの記憶が蘇っていく・・・。
その記憶は赤ちゃん時代から始まった。
天井を見て回転するモビールに
母に来て欲しいと泣く遥に
母の芳子が顔を覗いて
自分を呼び掛けて高い高いされた記憶。
ハイハイして、両親のもとに向かった記憶。
一歳になって自分で立てるようになった記憶。
父の信介と公園で歩く練習をした記憶。
そして、自分で言葉も話せるようになった記憶。
初めて友達ができた記憶。
三歳になって父親に家を新築してもらった記憶、
幼稚園に入園した記憶。
自分が風邪をひいてしまい幼稚園を休んで
仕事から帰って来た父親に
病院に連れてってもらった記憶。
年中の頃に、弟の遼真が生まれた記憶。
年長になり、まだ赤ちゃんだった遼真と遊んだ記憶。
小学校に入学した記憶。
家族で初めてキャンプに行った記憶。
緊急事態宣言に伴う外出自粛で
友達に会えなくなった記憶。
家族揃ってテレビで東京オリンピックを観戦した記憶。
運動会の徒競走で一位を取った記憶。
参観日に作文を発表した記憶。
家族で夏祭りに言った記憶。
小学校の修学旅行で箱根に言った記憶。
小学校を卒業した事。
中学校に進学した事。
授業中に窓の方見て燕が飛んでる様子を見たり、
友達と話し合ったり、
手芸部に入部して編み物を作ったり、
部活で帰りが遅くなって、日が暮れる中、
寂しく一人でトボトボ家に帰った。
そして帰宅後のリビングには母の芳子と弟の遼真がいた。
そして、仕事から帰宅した父の信介に、
弟の遼真と共に抱かれた。
そして、家族みんなで晩御飯に、
すきやき鍋を食べながら楽しい夜を過ごした。
でも、遼真と芳子と信介がいるだけで、
笑顔になれたり、幸せを感じる、そんな家族の風景。
そして記憶の中に、
平井家の長女が自分にしてくれたことで
夏休みに家族みんなで高尾山に
登山しに行った記憶だった。
回想が終わり、現実に戻った遥は号泣した。
芳子
「遥、私がお母さんだとわかる?」
そして、母親の芳子の問いに、
抱き着きながら答えるのだった。
遥
「あぁ・・・あああ!・・・お母さん・・・!
お母さん‼・・・ごめんなさい‼
うわぁぁぁぁぁんあぁぁぁぁぁぁん・・・!うぁぁぁ」
母
「大丈夫よ。さぁ、避難所になっている
総合病院に行こう。
遼真とお父さんが待ってるわよ。」
そして、そのクローラー車に乗り、
遼真達と共に避難している
総合病院に戻るのであった。
ポイント㉓
震災が発生した時も、家族を大切に!
家族と離れ離れになっても、心は一緒!
家族と一緒に行動すれば、
いつも一緒にいられる!
第十章「晴天」
遥が母親と再会してから数ヶ月。
平井姉弟は家族としての生活が再び始まった。
今回の令和関東・東海大震災で
地震の規模はマグニチュード8.8。震源の深さは十キロ
地震の原因はプレートが同時に割れた
最大級のプレート同時破壊直下型地震。
死者二十六万万二千人。行方不明者三十一万人。
負傷者四十万人。帰宅困難者一千万人。
経済被害額は最大百八十七兆十二億円。
それから日本各地や海外の協力により
東京都の復興が始まろうとしている。
ついに東京は半年ぶりの晴天へと導いていった。
信介のいる病室
左足を骨折しただけなので、ギブスを付けている。
信介
「偉かったなお前達。本当に無事だったな。」
母親の芳子はその嬉しさに涙した。
芳子
「よかった・・・二人とも生きてくれて。」
遥は病院を逃げ出したことを反省しながら伝えた。
遥
「うん。私のした事の方が一番悪い事だったよ。
東京が日本の首都じゃなくなるのが嫌で
みんなに伝えようとしたら
おじさんに怒鳴られた事で激昂して
この病院を抜け出しちゃって…
東京が地震と噴火で被災された事で
辛さと悲しさに我慢できなくて
思いっきり泣いちゃったんだ。
そこで落ち込んでいるとやっとお母さんが迎えに来て
家族写真を見て過去の事を思い出したな。」
芳子
「そうよね。その時、遥と遼真とお父さんがいる
病院に向かっていると落ち込んでる遥を偶然見かけたから
私が遥を励まして慰めてあげたわね。」
信介
「まぁ気にするな。遥の事だから
復興が終わったら東京はまた日本の首都に戻るさ。
遼真はどうだったか?」
遼真
「僕は仲間がいてお姉ちゃんの他に
未夢姉ちゃんに掛兄ちゃん、
木村先生が一緒にいてくれたから
僕も本当に楽しかったよ!」
遥
「大阪万博には行けなかったのは残念だったけど、
岡山に引っ越したら、またどこかに連れてってね。」
信介
「ああ、いつか行ける日が来たらな!」
すると、ゆうとが遼真に声を掛けた
ゆうと
「遼真くん、ちょっと来て!」
遼真
「ん?」
すると遼真は姉の遥と母親の芳子に窓の方に誘った。
遼真
「お姉ちゃん!ママ!ちょっと窓の方に来て!」
遥と遼真と芳子が子供達のいる窓の方を見てみると
雲の隙間から太陽の光が見えていた。
そして、東京都内は次第に晴れていき、
空が明るくなって、東京は半年ぶりに晴天日和になっていった。
子供①
「やったー!お日さまが見えてきたー!」
子供②
「東京が晴れてきた!」
子供③
「晴天!晴天!」
そして、遥も嬉しそうに空を眺めて呟いた。
遥
「久しぶりの、晴天・・・!」
未夢のいる病室
未夢のポータブルテレビには東京都が晴天になった中継映像が流れていた。
リポーター
「東京都内の様子です!
東京都は半年ぶりとなる晴天に恵まれました!」
その病室には療養中のベットに座る未夢と側には掛もいた。
未夢
「東京もようやく晴れるときはやってきたな!」
掛
「ああ、ついにこの時が来たか!」
総合病院の広場
快晴に恵まれた東京を見た木村は広場にいる皆を呼び出し晴れた東京に注目させた。
木村
「皆!ラウンジの方に集まれ!」
そしてラウンジの方に皆を呼び出し、快晴になった東京の空に指をさした。
木村
「見ろ!これが東京の新しい空だ!」
そして、東京は晴天による新しい光がここに差し込んだ。
それから数日後————
東京にはブルーインパルスが複数飛行していき、
東京中を元気づけていった。
そして、信介はリハビリを終えて、骨折を完治した。
そして平井一家は東京都を離れ、
岡山県へ引っ越すことになった。
信介
「もうリハビリを終えて骨折も完治したから
俺達もそろそろ行くか!
今日からまた家族としての生活が始まるぞ!」
すると、遥の友人である氷子が
親友である幹の事で話かけた。
氷子
「遥ちゃん!これから東京を離れるんだよね?」
遥
「あっ!氷子ちゃん!」
氷子
「幹ちゃんの事なんだけど。」
信介
「おっと、その前に皆にお礼とお別れを言わないとな。」
そして、平井一家はそれぞれ友人や仲間などにお別れを言いに行った。
親友の幹のいる病室
そこには幹とその母親がいたのだった。
幹は頭に包帯を付けており、顔にはガーゼと絆創膏が付いていた。
そして遥は幹が無事だったことが嬉しすぎて幹の方に泣きついた。
遥
「幹———‒—!」
幹のベッドで泣きつく遥を幹は優しく撫でた。
幹
「大丈夫だよ、ハルちゃん。
私、もう大丈夫だからね。」
氷子
「遥ちゃんはもう東京を離れちゃうから
お別れを言いたかったからね。」
そして、
病院の廊下には遼真と木村先生と友達とその家族がいた。
まさるの母
「この度はうちの息子を大変お世話になりました。」
ゆうとの父
「ええ、その友達の遼真くんも一緒だったので」
遼真
「家族にまた会えてよかったね、まさるくん!」
まさるは泣きながらこう言った。
まさる
「うん・・・!母ちゃんと妹には会えた・・・
でも父ちゃんは今回の地震に巻き込まれて
亡くなったって・・・!」
遼真
「そうだよね。でもまさるくんのパパも
きっと天国で見守ってるよ。
僕は東京を離れちゃうけど、僕の事も忘れないでね!」
そして、遼真とゆうととまさるは囲んで
友情を忘れないとお別れを伝えた。
まさる
「そうだな!お互い離れ離れになっても俺達は永遠の友だ!」
遼真
「まさるくん!ゆうとくん!今までありがとう!
遠くへ行ってもずっと友達だからね!」
ゆうと
「うん!忘れないよ!」
そして木村が遼真にこう伝えた。
木村
「遼真!」
遼真
「ん?」
木村
「向こうの学校へ行っても元気でやれよ!
向こうでも友達がいっぱい作れるからな!」
木村
「はい、木村先生!」
一方、信介は部下に別れを告げた
中村
「平井さんも向こうへ行っても
元気でやっちゃってください!」
信介
「おう!君も達者でな!」
そして、芳子はボランティアにお礼を言った。
芳子
「今まで本当にありがとうございました。
心から感謝してます。」
大瀬
「はい、こちらこそどういたしまして!」
頼子
「芳子さんも岡山へ行っても元気に過ごしてください!」
別れを告げた平井一家は病院を出て、港へ向かう事になった。
信介
「さぁ、やることやったし、そろそろ出発だ!」
遥・遼真・芳子
「うん!」
ロビーが見える二階の廊下
ロビーに降りようとする平井一家は
リハビリ中の未夢を偶然見かけた。
遥
「あっ、未夢さん!」
未夢
「おっ!遥と遼真じゃないか!これから東京を離れるのか?
アタシ、今丁度、リハビリをしてる所なんだ!」
芳子
「あっ、この度はうちの子供を大変ありがとうございました。
それもあなたのおかげです。」
未夢
「へへへ、ありござっす!」
遼真
「未夢姉ちゃんも早く元気に退院して、
被災者を励ましてね!」
遥
「未夢さん、今までお世話になりました!
またいつかどこかで会えたら嬉しいです!」
未夢
「ああ、遥と遼真とはここでお別れだけど、
アタシらの心はいつも一緒だ!
アンタ達、向こうへ行っても元気でな!」
そして、遥と遼真は笑顔で答えた。
遥・遼真
「うん!」
総合病院のロビー
遥
「東京とはしばらくお別れだけど、
岡山で第二の人生が始まるんだね。」
信介
「ああ、そうだ!俺達は岡山で新しい暮らしが始まるんだ!」
病院を出ようとする平井一家に掛が後を追ってきた。
掛
「遥、遼真!」
遥
「ん?」
掛
「俺、これから山形の農村に住むことになったんだ!
遥と遼真はこれからどこに住むんだ?」
遥
「私達は岡山県に住むことになりました!」
掛
「ああ、お互い離れ離れになっても心は一緒だ!
今まで本当に楽しい人生だったよ!
遥と遼真も岡山に行っても
頑張っていい大人になれよ!じゃあな!」
遥
「掛さんもお元気で!」
そして掛は遥達に別れを告げて、総合病院を去って行った。
信介
「さぁ、俺達も岡山行きのフェリーに乗るか!」
芳子
「うん、そうね!」
遼真
「じゃあ、レッツゴー!」
そして、平井一家は避難先の病院を後にして、港に向かった。
それから東京は日本各地と海外政府の協力により
復興が始まった。
仮設住宅は少しではあるが、十万棟設置している。
そして、東京都民は仮設住宅に住む人と
東京を離れる人と分散していった。
東京の方を振り向き、東京都に別れを告げた。
避難生活が終わっても私達の人生はまだまだ続く!
さようなら東京!復興したらまた会おうね。
そして、平井一家は岡山港行きのフェリーに乗船し、
東京都を去って行った。
終章「首都復帰」
二〇三六年 春 ——————
十一年前、東京は震災後。首都中枢機能は一旦停止したが、
その六年後の新関東都市誕生をきっかけとして、
帰還者が現れ、
今こうしてる間にも一人、また一人と戻ってきている。
東京の復興 ——————
そして、全国各地の支援と海外との協力の基により
日本は新しい経済に発展していった。
そして、復興を終えた東京は日本の首都に復帰した。
東京の人口も首都機能復帰後、徐々に戻っていき
新たなる挑戦へと立ち向かっていく。
人々が集まって楽しめる日々に
東京は再び経済成長へと向かい始める
再び平穏な日常を取り戻した
日本は震災以前と同様の生活に戻り
更には新しい便利な時代へと発展していった。
芸能人やアーティストライブの東京会場も
徐々に増えていった。
そして、新企業の創立————
社長
「東京の首都機能復帰を機に、我々も無事に
新しい企業を設立することができました!
新入社員も続々と入社してきてると思っているので
とても幸いだと思っています!」
老舗店舗の営業再開
店主 姉
「再開を祝ってくれてありがとう。
震災で一度はやめたこの店も
ここで再開することになりました。」
店主 妹
「ご支援してくれたみんな本当にありがとね。」
そして、他県から移住者や旅行客も増加していき
外国人観光客も再び東京へやってきた。
ユーチューバー
「復興したばかりの東京にやってきました!
まるで十一年前の東京とは思えないですね!」
アメリカ人観光客
「イエス!トウキョウガシュトニフッキシタコトデ
ワタシノゴラクガジョジョニフエテサイコーデース!」
今までの生活に戻った東京は新たな歴史を築いていった。
私達が住む日本は文明、社会、
技術、経済、大量消費、向上は
世界一位を記録していった。
そして、東京は再び、日本の中枢として、
再び営み始める。
夜の街を眺めるサラリーマン
サラリーマン①
「日本は今日も平和だなぁ。
より良い時代のために共に協力し合っていかないとな。
これからは後世の人達にも受け継いでいこうな!」
サラリーマン②
「はい!」
東京が復興した事で日本は大きく変わり始めた。
最新の物流や経済もよりよい暮らしや生活によって
大きく変わる。
夏にはお祭りや花火大会等の季節となり、人々は
歓喜に湧いてきて、更に盛り上がり、
秋には新鮮なものがたくさん採れて
美味しいものがたくさん食べられる。
冬になれば、クリスマスや年越しイベントにより、
人々が続々と集っていく。
そして、首都復帰から一年経っても
平和な日常は変わらない。
渋谷スクランブルスクエアの屋上
リポーター
「今、僕は渋谷スクランブルスクエアの屋上にいます!
ご注目ください!
これが復興を終えたばかりの東京の様子です!
なんとまるで、十二年前の東京とは思えなく、
新しい都市が創られているようですね!
新しくなった東京は日本の大都市!
正に東京は日本の大黒柱のようですね!」
東京が復興した事で新たなる暮らし、
新たなる人生がここに宿ってく。
そして新たなる出会い、愛していた人との再会により、
人々の交流が蘇っていった。
そして、東京は新たなる時代へと突入し、
更に進化していく時代へと突入していった。
日本は巨大地震が発生するが、
約数年の月日をかけて復興していく。
これから一年以内にどこが、二年以内にどこが、十年以内、
三十年以内にどこで
震災が発生してもおかしくない。
日本はこれまで、数々の震災が発生しており、今も後世に語り継がれ行く。
大震災から二年後、他道府県知事、
日本並びにアメリカをはじめとする
世界中の国が参加した会議が行われ、
東京都の復興に必死に努力した。
日本各地や世界中が東京の首都機能再生を待ってくれた。
それもこれもボランティアや海外、
日本各地の支援のおかげである。
そして、当時の震災の事を今の子供達に
あの時の事を知らせていく。
未夢の自宅
二十八歳になった未夢は既婚しており、
二人の子供に恵まれた。
五歳の長男、ようたと三歳の長女まゆな。
未夢の髪型は今は短髪になっている。
未夢の長女まゆなが平井姉弟のことに指をさした。
まゆな
「ねぇママ、この二人誰?」
未夢
「ああこの二人かい?この二人は平井姉弟って言ってな。
右にいるのが姉の遥。
そして左にいるのが弟の遼真だ。」
その写真は日本武道館に避難していた時の写真だった。
その写真の中には遥と遼真も一緒に写っていた。
未夢
「昔、東京は大震災が起きて大変なことになったからな。
その時、ママもこの震災を経験してるからな。
この姉弟に寂しい思いをさせないように
ママはこの二人をお姉ちゃん代わりにして、
楽しい日々を過ごしたからな!」
ようた
「へぇ~ママってこの二人に本当に
気が優しかったんだね!」
そして未夢は長男のようたと長女のまゆなを
当時の平井姉弟のように抱き寄せた。
未夢
「だろ?ようたとまゆなもあの時の
平井姉弟と同じみたいなもんだ!
今のママも気が優しいからな!」
お台場
久しぶりに東京にやってきた掛は四十一歳になっており、
三十三歳の妻の歩美と八歳の娘の日咲と共に
復興を終えて、首都機能が復帰したばかりの
東京を眺めていた。
掛
「久しぶりに東京に来たけど、
だいぶ前とすっかり変わっちまったな。」
歩美
「当時の震災とは思えないわ。
昔の東京とずいぶん違うわね。」
掛
「そうだろ歩美。東京は震災で
首都機能は一旦停止したが、
それから十年ぐらい経って
東京は首都に復帰したからな。」
日咲
「パパもあの時、東京にいたから
当時の事をみんなに知らせなきゃね!」
掛
「ああ、その通りだ。
みんなで助け合えば、いつだって平和は取り戻せる!
悲しい日々や辛い日々があっても
みんなで一人一人取り組めば命は救えるさ!」
東京駅前の行幸通り
その日の春、桜の木が並ぶ行幸通りには
成長した姿で東京に帰ってきた遥と遼真がいた。
遥は二十五歳になっており、遼真は二十歳になっていた。
遼真
「俺達も東京に帰ってきたな。懐かしいけど
復興して、東京は前とすっかり変わっちまったな。」
遥
「そうだね。十二年前の東京都は思えないよね。
首都に復帰して、街もすっかり
新しくなっちゃったからね。」
遼真
「姉ちゃん!今日から俺達はまた東京で暮らす事になるんだ!
一緒に楽しい人生を送ろうな!」
遥
「うん!そうだね!お互いここで
頑張って暮らしていこうね!」
十二年ぶりに東京に帰ってきた私と遼真は
ここで新しい人生を送ることになった。
久しぶりの東京での生活。
私達は、生きるためにここにいる!
遥
「東京、ただいま!」
遥と遼真は行幸通りの奥の方へ歩いて行った。
こうして、遥と遼真は再び東京で暮らし始めた。
東京が日本の首都に復帰した事で、
帰還者や移住者が増加し、
それぞれの人生を歩み始めた。
日本の首都・東京
経済や大量消費、行政などを支えていくために
国の未来を担い続ける。
ルーインド東京〈完〉