2021/2/5 08:53石版
運動は控えめに、食事はバランスよく(ほぼ病院食だけど)朝は7時に起きて、夜は21時には寝る。本と古いテレビと、それからたまに入れ替わるファッション雑誌と共に日々を過ごす。
私の世界は殆どが病院で完結していた。
学校だって殆ど行かなかったから、覚えてるのは保健室と職員室ぐらい。自分の席だって曖昧、窓際だったかな?普通の人とはかけ離れていたけど、病弱ってステータスがあったから、言い訳はついていた。
これが私の心の石版に刻まれたルールだった。
ある日、私は、普通の人になった。病院に入り浸ることも無い、普通の高校生。でも私には、病弱だった頃のルールしか知らなかった。
せめて勉強だけでも合わせようと、参考書を買いに行った時、私は奈緒に会った。
その時私は、同じクラスだったことも気づいてなかったけど、奈緒はわかってて話しかけてくれた。私の過去を知らなかったのか、あるいは知ってて興味を持ってなかったのか。奈緒は気を使いながらも、"普通の高校生"みたく私を色んな事に巻き込んできた。
学校の帰りに制服のままジャンクフードを食べに行った。
270円の揚げたポテトは体に悪そうな味がして、でも食べる手は止まらなかった。
0時回ってから流れる深夜アニメを、通話を繋いで一緒に見た。
結局2時ぐらいまで起きてて、翌日遅刻しかけた上に、寝不足がたたって授業中に少し寝てしまった。
そうやって心の石版を、奈緒は青紫のペンキで上塗りしていって、
気づいたときには、私の中のルールは丸々書き換わっていた。ほとんど塗り替えられた石版を見て、青紫だけじゃ映えないと思って、こんどは自分で緑青色のペンキをつけた。
270円のじゃなくて320円のポテトを買って、余った分を押し付けた。ネイルアートの実験台にしてやった。お互いの趣味を押し付けあって、やがてそれがいつも通りになった
それで私は堂々と、2色のペンキに塗れた到底石版とは思えないものを掲げるようになった。
他の人と違ってきれいじゃないけど。色が増えても「これが、アタシ」ってね。