2021/2/10 14:17短歌
  眉寄せて叱る顔すら見蕩れちゃうわたしをどうか煩わないで
「平熱が高いだけだよ!」そうやってわたしの不安を踏んでいくのね
 触れること目の合うことも駄目ならば遺骨くらいはくれないかしら
 白む空、うるさく響く鉄骨をスニーカーで踏みきみ想う朝
「ピーラーは役立たずなの」包丁で削がれる栄養、痩せるからだ
「インターホン押すの好きなの」合鍵をけして使わぬきみの言い分
 ブレーカー落ちるんだから夜のうち風呂済ませてよ、パンが焼けない
豆苗を切り三度目と呟いた 薄い財布じゃきみと会えない
足首の境界線をなぞったら迂闊だったと奥歯噛むきみ
事故だけど熱い抱擁を交わした いまこの瞬間世界よ滅べ
この恋を悲劇と呼ぶのは遺憾だが喜劇じゃないだけ幾分かまし
カラコンはもうゴミ箱の中にある 卵も二度と固く茹でない
卵液を落としてじゅわりと鳴る音がわたしの目覚まし時計二号