2021 短歌
木の肌に住まう青星雨うけとりて
輝きしずかに陰のうち
霧の山
とおく滝鳴る耳が泣く
狂躁すてとどろきとならん
うけてなお
あたえてもなお
かくありし
はなとながれる蜜欲す蝶
せみおらぬ秋のはじめの昼の原
はらはら落つるはねの絵よぎる
枯れてなお
しなやかにあるはかなさは
なにも持たぬこと知るかのごとく
金木犀
橙黄の花なきすがた
残香知らす肺の奥の
ゆきむしはこまる
すぐつぶれるから
それでもあいたい
ふゆ来るまえに
見れば影
見えぬなら「ひ」と
定む日に
両極の在
体現せんとす
暗がりに
うまれしこの目
日を向いて
わらっては泣き
泣いてはわらう
生まれたまま水浴びる朝
さすひかりすべて透かされ
はじめに還る
北国の極寒のろう下
あしばやに
ストーブそばへ
ストーブそばへ
咲く咲くと
にぎやかつぼみふくらして
冬そなえ待つ椿のみどり
♢ つららのおもいで ♢
かがやく つの
ぽきりと折って
きみにわたす
なにより高価な宝として
藍のそら、星、
紅と黄の秋の木々、
このうえ何を
望むだろうか
ひかり満ち
厚い雲さえ町照らす
満月の夜のまるい天蓋
● 泡 ●
うたかたに消えた
ひとびと
消えた文
消したひとびと
淋しさ消えず